2009年01月30日

「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」とキリスト教文化

「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ
(Terminator: The Sarah Connor Chronicles) 」

B001F4C6PCターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ ファースト・シーズン コレクターズ・ボックス [DVD]
リチャード・T・ジョーンズ, レナ・ヘディ, ブライアン・オースティン・グリーン, トーマス・デッカー
ワーナー・ホーム・ビデオ 2009-01-21

by G-Tools


アメリカ/テレビドラマ

ストーリー(概要)
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「ターミネーター2」から5年後。
1997年に起こるはずだった「審判の日」は阻止されたが、FBIに追われ
るサラとジョンは田舎の町から町へ転々としていた。

ある田舎町の高校に転校したジョンは、教師になりすましていたT−888型ターミネーターに襲撃される。危機一髪のところを若い女性の容姿を持ったTOK715型ターミネーター、キャメロン・フィリップスに助けられる。

2007年にタイムスリップしたサラとジョンとキャメロンは、2011年に迫っている「審判の日」を阻止すべく立ち上がる。


主な登場人物の紹介
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▽サラ・コナー

△ジョン・コナー
 サラ・コナーの息子

∵キャメロン・フィリップス(TOK715型)
 ジョンを守るために送り込まれたリプログラムド・ターミネーター。

△デレク・リース
 カイル・リースの兄。ジョンの伯父。抵抗軍兵士。

△チャーリー・ディクソン
 サラ・コナーの元フィアンセ。救急救命士。

△ジェームズ・エリソン
 FBI捜査官。

∵クロマティ/ケスター(T−888型)
 ジョンの抹殺のために送り込まれたターミネーター。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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巷では「ターミネーター4」の公開が待たれているが、今回紹介するのはテレビドラマ「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」(以下「TSCC」)の第1シーズンである。

「TSCC」は「T2」後の世界を舞台をしているが、2004年公開の「T3」および2009年公開の「T4」とは異なる世界とみなされる。

このあたりがちょっと複雑に思われるがかもしれないがそもそも「T2」と「T3」は同シリーズの作品とはおもえないほど世界観が異なる作風であったことをおもえば、とりあえず「T3」のことは忘れて、純粋に「T2」後のサラを中心としたターミネーター作品として観ればよい。

ターミネーターシリーズの最高傑作といえば「T2」と言われており、一般的にも「T2」までは観たことある人がほとんどだろうから、むしろスッキリとわかりやすく「TSCC」を観はじめることができるだろう。


■ 美少女ターミネーター

「T2」ではT-800型のターミネーター(シュワルツェネッガー)の活躍がみどころだったが「TSCC」では美少女ターミネーターが活躍する。

忘れろといっておきながらいうのもなんだが「T3」で登場した冷酷な印象を与えるT-X型の美女ターミネーターと比べると「TSCC」の美少女ターミネーターのキャメロンは年齢(見た目)が若く、愛嬌を感じさせる外見をしている。

ジョンが転校した先の高校に前もって潜入していたキャメロンが生徒になりすましていたり、他の学校に転校したときはジョンとキャメロンは兄妹として登校したりするから、歴代のターミネーターの中でも最も若い外見をもっているといっていい。

さらにキャメロン役のサマー・グローは、SFテレビシリーズやSF映画に出演するなどしてSF関連の助演女優賞を受賞したこともあるから、SF作品での演技は折り紙付である。

そんな彼女といえどもターミネーターの役を演じるとなれば、人間の感覚とはズレたあたりを大真面目な顔で演じなければならず、やりすぎれば作品のシリアス感が薄れてしまうことからも、その演技の塩梅(あんばい)が難しいはずだが、シリアスでありつつもちょっとボケる抑えた演技は、ターミネーター(機械)なのに愛嬌さえ感じさせるものとなっている。

日本人にとっては、キャメロンは黒髪に近く、瞳も黒色に近いのでより親近感を抱きやすいだろう。


■ 審判の日

ターミネーターシリーズで重要なキーワードは、いうまでもなく「審判の日」だ。

審判の日(JUDGMENT DAY) は核戦争によって30億の人命が失われた1997年のある日のことであり、生き残った人々と、サイバーダイン社が開発した軍事システム「スカイネット」との全面戦争がはじまる日でもある。

サラとジョンはこの審判の日を阻止しようと奮闘するのだが、注目すべきはジョンの苦悩だ。

審判の日を阻止することに成功すれば、ジョンが将来抵抗軍の司令官になることはない。つまり、人類を救う希望の星と言われることはない。

それどころか、審判の日を阻止する過程で犯したとされる罪、つまり「T2」での行いによってFBIに追われることになってしまった。

ジョンががんばって人類を救おうとしても、当の人類たちはまずだれもジョンに感謝の意を表さないばかりか、使命手配犯としてFBIが追ってくる。

ジョンは若く、自分の使命という運命に翻弄されそうになりながら、どう生きるべきか、何をすべきかと悩む。


■ ジョンの苦悩

そうこうしているうちに、ようやく審判の日の阻止に成功したとおもえてもまたさらなる審判の日が迫り、未来からは自身の命を狙うターミネーターが次々に送り込まれてくる。

FBIに追われる身のため、また2007年にタイムスリップした身のため、しばらくの間IDがなくて外出できない状況になったジョンは、身動きがとれなくてイライラした様子をみせることもある。

これは、小さな頃より母から、あなたは英雄と呼ばれるようになる、と聞かされつづけてきたのに、現実は逃亡と流浪の民にも似た生活を送りつづけなければならない身の上に戸惑い、自分がほんとうは何者でこれからどう生きていけばいいのかと悩むジョンの心の不安をIDの無さによって表現したものだとおもわれる。

ジョンとて人間である。ジョンは自分の使命や運命から逃れたいと思ったことはあるはずだ。

ジョンはやがて偉大な司令官になり、人類を救うために大きな働きをすることになるが、このようにとても人間くさい面を持ち合わせている。

そんなジョンはだれかに似ていないだろうか。


■ 人間くさい?

いうまでもなく、その誰かとは、イエス・キリストである。

審判の日や、ジョン・コナーが「J・C(ジーザス・クライスト)」と表記できることからも、ターミネーターシリーズが聖書やキリスト教文化の影響と多分に受けていることはだれの目にも明らかだ。

そういったことをふまえても「とても人間くさい」ことがなぜイエスと関連するのかと首をかしげる人がいるかもしれない。

教会で神父や牧師が話してくれるイエスはやさしく柔和な人物だった面が強調される傾向がある。しかし、イエスはナザレ村の大工の息子である。

自身も大工であり、強靭な肉体を持ち、周囲の人々から信頼される親分肌のたくましい男だったいう説もある。

イエスの伝道・布教活動はわずか3年ほどだが、その期間のほとんどは各地を歩いて回っていた。野宿はいつものこと。室内で書物を読んで、会堂の壇上から説教するようなことはまずなかった。野や山や湖畔などで大勢の人たちと共に食事をして語り合い、共に笑ったのだ。

そしてイエスが地上で人類を救うためにどんなに大きなことをしても、当時の人々の多くはそれに感謝するどころか、十字架にかけてしまったのだ。

ターミネーターシリーズの審判の日を仮に人類滅亡の日とするならば、その日を避けるために、人類の滅亡を阻止するためにジョンとサラは立ち上がる。彼らを助ける者はごくわずか、数名である。

それは、人類を救うためにイエスがわずか12名の弟子を連れて宣教活動をしたことと重なる。


■ 死ぬことによって生きる

イエスは人類のために一度亡くなるが復活したとされる。

ジョン・コナーは審判の日を阻止する活動のために、ふつうの少年時代やふつうの高校生活をおくれず、ふつうの恋愛さえできない。少年の日常という人生を、人類を救うために提供したともいえよう。

ジョン・コナーはふつうの少年時代を失ったかもしれない。それはふつうの人生をおくれないという意味で「死」んだも同然と捉えることもできるが、大事なことは人類を救うために審判の日を阻止するために活動することが、逆に「生きる」ことになっている点だ。

むしろ、何の使命もなく、また使命に気づかず、無意味と思える毎日を惰性のままにズルズルと過ごしていくことのほうが「死」に近いのではないか。

だからジョン・コナーはふつうの少年時代を犠牲にして死んだようでありながら、実はそれによって「生」かされているのだ。

ジョン・コナーは審判の日を阻止したからといって「世的」に、つまり世間的に英雄になれるわけではない。

それにもかかわらず審判の日を阻止するために、人類を救うために活動する彼は、キリスト教世界の歴史でいえば、世的な権力を求めるわけでもなくひたすら聖書のことばに忠実であろうとする聖書主義者たちの姿に重なるのではないかだろうか。

このようにとらえると「ターミネーター」シリーズは聖書やキリスト教文化との関連はだれでもすぐに察しがつくが、その意味するところはたいへん深いということになるのである。


■ その他

ターミネーターシリーズが好きな人。とくに「T2」の世界感が好きな人におすすめします。

アクションシーンの分量はテレビドラマということもあって映画に比べればそこそこですが、むしろ抑制がきいて好感が持てます。

アクションを期待するよりも「T2」の世界観に近いものを堪能しながらサラとジョンの心境に思いを馳せる。そんな楽しみ方がいいでしょう。

だってあのサラが婚約までする男性が登場するんですから。強いサラだって女性なんだという面もちゃんと織り込まれているんですよ。
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