2008年07月10日

ポーラー・エクスプレス(THE POLAR EXPRESS)

作品名「ポーラー・エクスプレス(THE POLAR EXPRESS)」
    
ロバート・ゼメキス監督/アメリカ合衆国/2004年/100分
原作: クリス・ヴァン・オールズバーグの名作絵本『急行「北極号」』

●物語に最適な映像表現方法をつかった、信じることのすばらしさを伝えるクリスマスファンタジー。鈴は聖書の「長血をわずらっている女」のエピソードを彷彿とさせて「信仰」を象徴している。


Story(ストーリー)
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クリスマスイブの夜。窓の外には雪が降り積もっている。サンタの正体は父親ではないかと疑いはじめていたヒーロー・ボーイは、夜中に突然の大きな音に目が覚める。

窓の外をみると、家の前に機関車が止まっていた。

パジャマにガウンを羽織ったヒーロー・ボーイはサンタクロースに会いに機関車ポーラー・エクスプレス(急行北極号)に乗って北極点へ向かう。


Main Character(主な登場人物)
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△ヒーロー・ボーイ(HERO BOY)
少年。サンタの存在を少し疑いはじめている年頃。

△車掌THE(CONDUCTOR)
 機関車ポーラー・エクスプレスの車掌。北極点への案内人(ガイド)

△ホーボー(THE HOBO)
 ポーラー・エクスプレスの屋根の上にいる謎の男。自らを「北極点の王」
 と名乗る。

△ロンリー・ボーイ(LONELY BOY)
 少年。ほかの少年少女とは離れてひとりでいることが多い。

△ヒーロー・ガール(HERO GIRL)
 少女。積極性と行動力があり、引率力もある。


Comments(論評、批評、意見)
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●物語に最適な映像表現方法をつかった、信じることのすばらしさを伝えるクリスマスファンタジー。鈴は聖書の「長血をわずらっている女」のエピソードを彷彿とさせて「信仰」を象徴している。

「ポーラー・エクスプレス」で使っている方法は、モーション・キャプチャーの進化形ともいえるパフォーマンス・キャプチャーだ。

パフォーマンス・キャプチャーでは、俳優は全身にセンサーをつけており、体だけでなく動きや顔の表情までキャプチャーすることが可能だ。そのため俳優の演技が作品を作り上げていく際の重要な要素になっている。

3Dを使って人間そっくりな登場人物が活躍すると聞いて、よい印象を受けない方もいらっしゃるだろう。

なぜなら、デフォルメされたアニメーションではない、リアルな人間が登場するとなると、なんだか気持悪いと感じる方もいるかもしれない。リアルな人間を登場させるなら、本物の俳優でよいではないかと思うのが普通だ。

また、ふと例の作品が頭をよぎる方もいるだろう。そう、スクウェアが制作した全編フル3DCG映画作品「ファイナルファンタジー」のことだ。

見事にコケたこの作品は、人間そっくりな登場人物を作る必要があるのか? という問いを投げ掛けたという意味で、意義のある1作だった。(スクェアエニックスは映画事業から撤退したが、大きな失敗からはとてつもなく多くのことを学べるはずだ。いつの日か映画制作に挑戦してもらいたい)

私は「ポーラー・エクスプレス」を観る前は疑問に思っていた。『急行「北極号」』の映画化にあたり、当然に「ファイナルファンタジー」という作品のことは知っていたであろう制作者たちは、なぜまたリアルな人間を登場させる作品を作る気になったのか――と。

「ポーラー・エクスプレス」を観るとすぐに答えがわかった。それはこういうことだ。

まず、伝えたい物語がある。原作絵本の油絵の世界を映像化する最適な方法はなにかと考える。そうしてみつけた方法がパフォーマンスキャプチャーなのだということだ。

日本のアニメーション作品やCG作品や特殊効果を使った作品を観てよく思うるのはこの逆だ。

特殊効果や特殊技術や最新技術を使いたくて(表現)したくてストーリーを付けてみたのではないかと思うことがあるのだ。つまり、技術が先でストーリーは表現のためにとって付けただけということだ。

だが「ポーラー・エクスプレス」は物語ありきなのだ。物語があって、それを表現するための特殊効果なのだ。

では作品のみどころを紹介しよう。

〈言葉〉
ポーラーエクスプレスの乗客の子供たちはそれぞれ自分の乗車チケットを持っている。車掌はチケットにパンチで文字を刻む。アルファベット2文字ほどの文字がいったいなにを意味するのか? そこにはそれぞれの子供へのメッセージが込められている。
アメリカ合衆国ではクロスワードパズルに人気があるという。ちょっとした空き時間などに、雑誌に載っているパズルを解いてみたりする。言葉遊びの楽しみがある仕掛けだ。

〈視点・カメラワーク〉
チケットが風に飛ばされて宙を舞って作品の世界を飛び回る。登場人物さえも見ることができない自然の風景を観客は楽しむことができる。また、モノに反射して映る映像や、鍵穴から覗いた映像などもみどころだ。

〈鈴〉
信じることのすばらしさを教えてくれる小道具。

〈キリスト教文化〉
鈴が関係するシーンは、信じることの力をスマートに表現している。これは新約聖書ルカによる福音書8章43節から48節に載っている話に近いだろう。
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12年間長血(病気)をわずらっている女が、群衆のなかのイエスに、後ろから近寄ってその衣のふさに触った。すると病気がたちまち治ってしまった。

イエスは、わたしにさわったのはだれか、と言われた。群衆がひしめきあって
いたのでだれが触れてもおかしくなかったが、イエスは、力がわたしから出て行ったのを感じたのだ、と言われた。

女は震えながら進み出てひれ伏して、さわった訳と、さわるとたちまちなおったことをみんなの前で話した。イエスは女に言われた。あなたの信仰があなたを救ったのです。
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〈ジェットコースターかのようなスリリングな展開〉
ポーラー・エクスプレスでの北極点までの旅は観客をまったく飽きさせない。トナカイの群れ、列車の屋根にいる謎の男など。とくに氷上ドリフトシーンについては、いままであんなシーンは見たことがない。

〈雪〉
しんしんと降る雪。
そんな表現がぴったりな雪の描写がすばらしい。私はかつてある知人から、雪というものは綿のようにふわふわと降るというのををきいたが、にわかには信じられなかった。だが北海道に行ったとき、ほんとうに綿
のような雪がキラキラと光りながら舞い降りる雪を見て、知人の言ったことはほんとうだったと思ったものだ。
そんなことをふと思い出させてくれる、そんな雪の描写であった。

〈ホットチョコレート(ココア)〉
ポーラー・エクスプレス車内でふるまわれるホットチョコレートの給仕シーンでのダンスと音楽は、これぞショータイム! いうものになっている。

「ポーラー・エクスプレス」は子供だけでなく、大人こそ観て楽しめる作品だ。

ぐいぐいと引きこんでいくテンポの良さと、キャラクター造形と配置の巧さ。エルフの顔がちょっと怖いがそれもまた愛嬌だ。

おすすめである。


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