2008年07月10日

「グラディエーター(GRADIATOR)」

「グラディエーター(GRADIATOR)」
リドリー・スコット監督/2000年/アメリカ

cover

●宗教的、歴史的ストーリーを根底に、最新のCG映像技術を駆使して再現したコロシアムで、迫力の戦闘シーンをみせる。マキシマスが嫉妬や妬みによって将軍の座を追われ、奴隷になるというのは、旧約聖書のヨセフの物語がベースだろう。(マキシマスが商人隊に連れられ、砂漠を進むシーンは、まさにヨセフが商人の一隊に売られるという話をなぞらえたもの。
     
〔1〕ログライン(Log line)(ストーリーを述べてある一文)
―――――――――――――――――――――
奴隷剣闘士となった元将軍が、家族の復讐のため、コロシアムで勝ちつづけて仇の皇帝を追いつめる。


〔2〕ストーリー(Story)簡略に
―――――――――――――――――――――
時の皇帝に信頼されていたマキシマス将軍は、コモドゥスの陰謀により妻と子を失い、奴隷となる。剣闘士として闘いながら、ローマのコロシアムに乗り込む。そこで、皇帝となったコモドゥスと再会し、復讐を誓う。
 

〔3〕Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△アエリウス・マキシマス将軍
 ローマ帝国将軍

△マルクス・アウレリウス・アントニウス(Marcus Aurelius Antoninus)
 ローマ皇帝。五賢帝最後の皇帝。

△コモドゥス
 マルクス・アウレリウス帝の息子

△ルシラ
 コモドゥスの姉

△プロキシモ
 奴隷商人。剣闘士を養成している。


〔4〕宗教と映画作品
―――――――――――――――――――――
旧約聖書「ヨセフの物語」

「ヨセフの物語」とは?
旧約聖書の創世記に登場するアブラハムの子孫(アブラハム→イサク→ヤコブ[イスラエル]→ヨセフ)であるヨセフは12人兄弟のなかで、父ヤコブの寵愛を一番に受けていた。ヨセフは長男だけが着る特別な上着をヤコブに着せてもらっていたほどだ。

なぜならヤコブが一番愛していた妻ラケル(当時、妻が複数いることは普通だった)の長男がヨセフだったからである。

ある日、ヨセフは自分が見た夢を家族に話した。

その夢とは「畑で麦刈りをしていると、急にぼくが刈り入れた麦の束が立ちあがり、兄さんたちの束がぼくの束を取りまいておじぎしんだ」というもので、ほかの夢では「太陽と月と十一の星が皆ぼくにおじぎし
た」というものだった。

(太陽と月はヨセフの父と母を表す。十一の星はヨセフの兄弟たちを表す)

これによってさらにヨセフは兄たちから妬まれ、憎まれた。

ある日、ヨセフは兄たちによってエジプト行きの商人の一隊に銀二十枚で売られてしまう。

エジプトで奴隷として売られた先はエジプト王朝の役人の家であった。ヨセフはよく働き、仕事の管理を任されるようになったが、役人の妻の逆恨みで投獄される。

獄中でヨセフは王の給仕役長と料理役長の夢の意味を解いてみせた。そのことがきっかけで、2年後に王が見た夢(七年の豊作の後、七年の飢饉になる)を解き、ヨセフはエジプトの総理大臣になった。

やがて飢饉となって、ヤコブの息子たちはエジプトへ食料を買いにやってくる。

ヨセフは兄弟たちと再会するが、自分がヨセフだとは明かさずに、はたして昔のままの兄たちかどうか知ろうとする。兄たちは善き人となっていたことがわかり、ヨセフは真実を打ち明けた。

そして、一族をエジプトのゴセンの地に呼び寄せ、家族揃って飢饉を乗り越えることができたのだった。
 
それから数百年後、イスラエルの民の子孫は増えて、多くの数になった。これに危機感をもった王は、イスラエルの民を虐げるようになる(※)。
 

〔5〕Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
宗教的、歴史的ストーリーを根底に、最新のCG映像技術を駆使して再現したコロシアムで、迫力の戦闘シーンをみせる。マキシマスが嫉妬や妬みによって将軍の座を追われ、奴隷になるというのは、旧約聖書のヨセフの物語がベースだろう。(マキシマスが商人隊に連れられ、砂漠を進むシーンは、まさにヨセフが商人の一隊に売られるという話をなぞらえたもの。

西暦180年、ローマ帝国――。

マキシマス将軍は優秀な武将で、部下から信頼されている。時の皇帝マルクス・アウレリウス帝からも信頼され、次期皇帝の座につくように勧められる。

これを知った、アウレリウス帝の息子コモドゥスは父を亡き者として、マキシマス将軍を抹殺しようとする。

こうして将軍の座を追われ、愛する妻と子を失ったマキシマスは、奴隷として売られる。奴隷剣闘士(グラディエーター)として勝ちつづけ、観衆から声援を受けるようになる。


■ パンと見世物

ローマ帝国の最盛期には、ローマ市民権をもつ人々は、かなりの特権階級であった。

特権階級でなくても、ローマ市民には「パンと見世物」が与えられることになっていた。

皇帝は市民に「見世物」を提供して、皇帝への支持をとりつける――こうした「見世物」の最も人気のあるもののひとつが剣闘士たちによる決闘であった。
 
マキシマスはひとりの剣闘士として小さなコロシアムで、家族の復讐を果すため、生き延びるため(サバイバル)に闘い、勝ちつづけてゆくのである。

この、将軍から奴隷剣闘士へ、というのは「ベン・ハー」に似ている。

また、マキシマスが嫉妬や妬みによって将軍の座を追われ、奴隷になるというのは、旧約聖書のヨセフの物語を彷彿とさせる。

また、マキシマスが商人隊に連れられ、砂漠を進むシーンは、まさにヨセフが商人の一隊に売られるという話をなぞらえたものだろう。
 

■ 聖書の有名なエピソードをちりばめている

ストーリーラインに目新しさはなく、むしろ、過去の有名なストーリーの骨格を忠実に作品に取り入れている。

そうすることで、キリスト教徒やユダヤ教徒や、歴史に興味ある者が知っているヨセフの物語を重ねることで、幼い頃から繰り返し聞かされてきた物語を聞くように、自然と馴染んで観ることができるようになっている。


■ 騎馬戦車隊との戦闘シーンは圧巻

作品の特徴は、迫力と緊張感ある戦闘・決闘シーンだ。

「ベン・ハー」では騎馬戦車レースのシーンがあるが「グラディエーター」では10人程の奴隷剣闘士と騎馬戦車隊の戦闘シーンがある。

見世物としての目的は、騎馬戦車隊が奴隷剣闘士たちをなぶり殺しにする、というものだったが、兵士の経験がある奴隷剣士たちは、マキシマスの卓越した戦闘能力を知っており、マキシマスの戦術指揮で一致協力して陣形を整え、騎馬戦車隊を撃破する。
 
観衆はこの快挙に大歓声を送り、皇帝となったコモドゥスは民衆の意向に逆らえずに、マキシマスを生かすよう指示する。

この騎馬戦車隊との戦闘シーンは圧巻である。

戦況によって一瞬で陣形を変え、騎馬戦車の急所に攻撃をしかける。馬が疾走する蹄――。轟音を響かせる戦車の車輪――。

黒澤明監督の「七人の侍」でも、野武士の集団が村に攻めてくるやってくるシーンで、疾走する馬たちが土をける蹄の音が、迫りくる危機感と恐怖感を存分に表現していた。

「グラディエーター」や「七人の侍」を観ると、馬の蹄の音は人に独特の恐怖感を与えるものだというのがよくわかる。

どちらの作品もストーリーはシンプルである。

日米の騎馬戦闘シーンを見比べてみるのもいいだろう。

-----------------------------
(※)この時期にモーゼが現れ、イスラエルの民を約束の地カナンへ導く(旧約聖書出エジプト記)。
このモーゼの物語を元にした作品が、「十戒」(セシル・B・デミル監督)である。他にドリームワークス作品「プリンス・オブ・エジプト(The Prince ofEgypt)」もある。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。