2008年07月10日

ブラザーズ・グリム(The Brothers Grimm)

「ブラザーズ・グリム(The Brothers Grimm)」

監督:テリー・ギリアム
アメリカ/2005年/117分

B000CRRBEEブラザーズ・グリム DTS スタンダード・エディション
アーレン・クルーガー
ハピネット・ピクチャーズ 2006-03-17

by G-Tools


●森の映像世界で繰り広げられる「グリム童話ができるまで」というプレミス(Premise ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア)が光るファンジー。ヨーロッパにおける「森」とは? キリスト教的価値観というメガネを通して「森」をみると……。

ストーリー(概要)
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19世紀――フランス統治下のドイツ。
魔物退治の賞金稼ぎグリム兄弟は、イカサマがバレてフランスの将軍につかまり、10人の少女たちが失踪したマルバデンの森の調査と解決に向かわされる。
森の奥の塔にまつわる王女の物語をきいたグリム兄弟は、様々な魔物に遭遇しながらも失踪事件の謎を解くべく、サバイバルと子供たち救出をかけて活躍する。


主な登場人物の紹介
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△ウィル・グリム
 現実主義者

△ジェイコブ・グリム(ジェイク)
 ロマンティスト

△ドゥラトンブ
 フランスの将軍

△カヴァルディ
 ドゥラトンブ将軍の部下

△アンジェリカ
 村の猟師の娘


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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●森の映像世界で繰り広げられる「グリム童話ができるまで」というプレミス(Premise ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア)が光るファンジー。ヨーロッパにおける「森」とは? キリスト教的価値観というメガネを通して「森」をみると……。


■ 森

「モリゾー」の森ではありません(笑)ヨーロッパ中世における森とは、畏敬の対象であると同時に豊かな恵を与えてくれるものでもありました。

森ではなにが起こるかわらない、人間の力が及ばない神秘の世界であると認識されていました。例えばロビン・フットが森の奥深くに入っていたのは、悪徳領主から一時的に距離を置いて態勢を立て直すためですね。人々は森を恐れて奥深くには入ってこなかったのです。

こうした森に対する考え方をうまく利用した作品にM・ナイト・シャマラン監督の「ヴィレッジ」があります。森に入らないという約束で平和を保ってきた村という設定は、森にはなにか得体の知れないものがありそうだ、というニオイをプンプンさせることができます。

キリスト教の布教活動においてそのような「森」は邪魔な存在でした。森には近づかない。さもなれければ……。


■ フランス統治下のドイツにおける「森」とは?

「ブラザーズ・グリム」でもフランス統治下のドイツという設定になっており、支配側であるフランスがキリスト教的価値観というメガネを通して「森」をみると、それは民衆を惑わずやっかいなものとなって映るのです。

はじめ統治側(フランス)の将軍はドイツの田舎の村で起きた子供の連続失踪事件の犯人を暴こうと、部下とグリム兄弟を送り込みますが、どうにもうまくいきません。ならばやっかいな「森」を焼き払ってしまえ!ということになるのです。


■ 新教・旧教の対立でさえ……なのだから

他者(森)を受け入れられないあたりは、同じキリスト教でも新教と旧教でお互いを認められずに対立して幾度となく多くの血を流してきた宗教戦争(例:ユグノー戦争)の精神的な根本・基盤を暗示しているかのようでもあります。

ユグノー戦争の発端となった宗教改革がドイツのマルティン・ルターによって始まり、宗教改革者のカルヴァンの思想がフランスでも勢力を持ってやがて「アンボワーズの陰謀」→「サン・バルテルミの虐殺」に繋がっていったことをふまえると、同じキリスト教でも新教と旧教の対立で戦争になったのだから、ましてや1800年代のフランス統治下のドイツの片田舎におけるフランスの「森」に対する認識と対応というのは、支配者層を悩ますやっかいなモノ以外のなにものでもなく、そういったフランスにとってよくないものはいつもドイツからやってくるという気持ちの苛立ちもあり、面倒になるぐらいなら森を焼き払ってしまえ!という心理につながっているであろうことが想像できます。


■ 森の映像世界が確立

監督のテリー・ギリアムは漫画家、イラストレーター、アニメーション作家でもありイギリスのコメディ番組「モンティ・パイソン」にも唯一のアメリカ人として出演していました。

アメリカ合衆国ミネソタ州に生まれ、子供の頃には森をかけずりまわって遊んでいたといいます。

子供の頃に遊んだ森。漫画。イラスト。アニメーションで鍛えたセンスと技。これらが下地になって「ブラザース・グリム」の舞台となる「森」の映像世界が作り上げられています。

この監督の映像世界が好きなファンにとっては「ブラザーズ・グリム」は待ちに待った新作ということになります。


■ ひとこと

映像世界は確立されていて、映画の世界に浸ることができます。グリム童話がができるまで、というアイデアは面白く、兄弟の葛藤も描きつつ森の神秘と冒険といった要素も入っています。キャラクーに変化をみることもできます。ストーリー内容もマニアックにならないように配慮しています。

でも、いまひとつふたつ足りないように感じるかもしれません。期待していたものはすべて揃っていたのだけど、いい意味でのサプライズがなかった。

せっかく尖っていた「目玉」を丸くされて、どこが目だか顔だかわからなくなってしまったようで、それはまるで、村の井戸に現れて少年を「カオナシ」みたいにしてしまう液体状のモンスター(?)のようでもありました。

童話、森、マット・デイモンときいてワクワクする方は充分に楽しめるでしょう。


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