2008年07月10日

バットマン ビギンズ(BATMAN BEGINS)

作品名「バットマン ビギンズ(BATMAN BEGINS)」

クリストファー・ノーラン監督/アメリカ/2005年/134分

B000PFUC80バットマン ビギンズ
クリストファー・ノーラン
ワーナー・ホーム・ビデオ 2007-06-08

by G-Tools


●井戸で一時的な乾き(癒し)を得るのではく、恐れと罪の象徴(コウモリ)を受け入れ、タラントを活かした「行動」を通してゴッサムシティ(ソドム)の正しい人(ロト)を助ける男――それがバットマン。

物語の紹介
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幼い頃に古い枯井戸に落ちた少年ブルースはそこに巣くっていたコウモリを恐れるようになる。
ある夜、強盗に両親を殺害されたブルース。青年になった彼は旅に出ます。闇から闇へと渡り歩いて悪の知識と手口を習得します。
やがてヒマラヤである男に出会い、武術、柔術、剣術等を身につけます。
故郷ゴッサムシティに戻ってきたブルースは、表向きは大富豪のプレイボーイを演じならが、裏ではバットマンとして悪を罰して退治します。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ブルース・ウェイン/バットマン
 大富豪。

△デュカード
 ブルースの師

△アルフレッド・ペニーワース
 ウェイン家の執事

△レイチェル・ドッドソン
 検事。ブルースの幼馴染の女性。

△ラーズ・アル・グール
 ヒマラヤの組織のボス

△ジム・ゴードン
 警官。バットマンと協力する。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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●井戸で一時的な乾き(癒し)を得るのではく、恐れと罪の象徴(コウモリ)を受け入れ、タラントを活かした「行動」を通してゴッサムシティ(ソドム)の正しい人(ロト)を助ける男――それがバットマン。

■ タラントの活かし方 

主人公ブルース(バットマン)は生身の人間です。特別な能力があるわけではありません。

でも、生まれも育ちも才能のひとつ、というならば、ブルースは他の多くの人々にはない才能をもっています。

それは、両親から譲り受けた膨大な財産と大会社です。つまり富をもっているのです。

新約聖書マタイによる福音書25章14節に「タレントの譬え(たとえ)」話があります。

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「タラントの譬え話」

ある人が旅に出るとき、3人の僕(しもべ)にそれぞれの能力に応じて5タラント、2タラント、1タラントを預けた。
5タラントと2タラントを渡された者はそれで商売をして倍にした。1タラントを渡された者は地を掘って主人の金を隠しておいた。
僕(しもべ)の主人が帰ってきた。5タラントと2タラントを渡されていた者はそれぞれ倍に増やしたことで主人に「良い忠実な僕よ」と、多くのものを管理するよう言われた。1タラントを渡されていた者は地に埋めておいたことで主人に「悪い怠惰な僕よ」と言われた。1タラントは取り上げられ、10タラント持っている者に与えられた。
--------

ここで「Mr.インクレディブル(THE INCREDIBLES)」の登場人物シンドロム(バディ・パイン)に登場してもらいましょう。彼は発明王であり、元スーパー・ヒーローオタクでもあります。

シンドロムは発明という才能を用いて、テクノロジーで大きく儲けてロボットやグッズを作ります。それらを使ってヒーローになろうとします。

一方、ブルースは膨大な財産を持つという才能を用いて、バットモービルに乗ったり、バットマングッズを使ったりして悪を懲らしめます。

シンドロムもブルースも与えられた「才能」を最大限活かしているのです。違うのは「才能の用い方・目的」です。

シンドロムの発明やブルースの膨大な財産とまではいかなくても、だれにだってその人ならではの「タラント」があるはずです。

10タラント与えられる者もいれば、1タラント与えられる者もいます。それぞれのタラントに応じてその才能を活かすことが求められているのです。

ブルースはバットマンという正体を隠すために「プレイボーイの富豪」というキャラクターを演じています。

タラントを活かして自分にできること(悪を懲らしめる)を一生懸命行っているブルースは、その正体を明かすこともできずに孤独な戦いをつづけています。

そんなブルースの支えとなるのは執事のアルフレッドです。アフルレッドはウェイン家の執事です。彼はブルースを見守っていますが、ひとつだけブルース坊ちゃんにお願いします。家名を汚すことだけはおやめください――と。

しかしブルースは屋敷で開いた自分の誕生パーティで、人々を守るために家名を貶めるようなことを言います。

そして屋敷は焼け落ち、命からがらに急ごしらえの地下の秘密基地に逃れたブルースとアルフレッド。

ブルースは、(家名を汚してしまったこんな俺だけど)それでもおれを見捨てないでいてくれるか? といった意味のことをアルフレッドに言います。

アルフレッドは、私は坊ちゃんをいつでもサポートします、といった意味のことを
言います。


■ ソドムとゴモラ 

旧約聖書創世記18章16節〜にソドムとゴモラの話があります。

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「ソドムとゴモラ」

腐敗したソドムとゴモラを滅ぼすことにした神にアブラハムがお願いします。もし50人の正しい者がいたらあの街を滅ぼさないように――と。そして45人、40人、30人、20人と数を減らしてお願いし、ついに10人の正しい人がいたら滅ぼさないという言葉をいただくことができました。

ふたりの天使はソドムの町に行き、ロトの家に入りました。するとソドムの町の人々が押し掛けてきて、戸を叩いたり叫んだり無礼なことを言ったりしました。天使たちは戸を破ろうとした者たちを打って目をくらませ、ロトに家族を連れて町を出るように言いました。
天使たちはロトと妻とふたりの娘の手をとって町の外へ連れ出しました。町を離れる際に走っていたロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になりました。
--------

腐敗したゴッサムシティを見捨てずに正義を行おうとするブルースは、家名を汚してしまったこんな自分をゆるしてくれるか、と執事のアルフレッドに尋ねます。
家名の評判は落ち、立派だった屋敷は焼け落ち、命からがら崩れそうな秘密地下基地にたどりついたアルフレッドは、それでもブルースの傍を離れれずにサポートするといいます。

また腐敗したゴッサムシティには幾人かの正しい者がいます。レイチェル・ドッドソンやジム・ゴードン、それに旧市街の子供たちなどです。

これらは、ソドムにたとえ50人の正しい者がいても、いえ10人の正しい者がいても滅ぼさないと約束され、しかし実際はロトひとり(ロトの妻とその娘ふたり)しか正しい者がいなかったので、これを救い出した聖書の話に重ねてみることができるでしょう。

また橋が上がられて閉鎖地域とされた旧市街にブルース(バットマン)とジム・ゴートンが乗り込んでいくのは、ふたりの天使がソドムにロトを救いにやってくる話に重ねて観ることもできます。

聖書にはソドムとゴモラが硫黄と火によって滅ぼされたあとには「地の煙が、かまどの煙のように立ちのぼっていた」(創世記19章28節)とあります。

ゴッサムシティのいたるところから垂直に高く噴き出す水蒸気の様子はこれを真似たものでしょう。


■ 井戸と罪の意識と生ける水 

幼い頃に古い空井戸に落ちたことからブルースの物語がはじまります。
あのときなぜ井戸に落ちたのか。それは這い上がるためだとブルースの父は言います。

新約聖書ヨハネによる福音書4章5節〜には有名な「ヤコブの井戸」の話があります。

イエスが弟子を連れてサマリヤのスカルという町にやってきたとき、そこにヤコブの井戸がありました。
イエスが井戸のそばにすわっていると、ひとりのサマリヤの女が水を汲みにきました。イエスはこの女に「水を飲ませてください」と言われました。そしてあなたに生ける水を与えようとも言います。

このヤコブの井戸というのは、土地から染み出す溜め水で、その深さは30メートルはあったといいます。

これとは別のいわゆる涌き水というのは「生ける水」とも言われ、清めの儀式に使わる罪や汚れを清める効力があるともいわれていました。

サマリヤの女は、溜め井戸のそばにすわっている、くむ物ももたない男が涌き水を与えようというので、不思議に思います。そもそもユダヤ人がサマリヤ人に水を飲ませてくれと頼むこと自体が奇妙に思えました。というのは当時ユダヤ人とサマリヤ人は仲が悪くて交際していなかったからです。

(ユダヤ人とサマリヤ人との関係を表す話に「良きサマリヤ人」〈ルカによる福音書10章30節〜〉があります)

そこで女はイエスに、あなたはこの井戸をくださったわたしの偉大な先祖のヤコブよりも偉いかたなのですかとききます。

イエスが言ったのは「永遠の命にいたる水」「罪を清める水」という意味だったのですが、サマリヤの女が涌き水と勘違いすることをお見通しだったようです。

それによってサマリヤの女のヤコブへの尊敬の念を引き出すためだったとも受け取れます。

ヤコブの井戸。ではヤコブとはどんな人なのでしょう。

ヤコブとはイサクの子です。イサクの息子は双子で、兄がエソウで弟がヤコブです。

ヤコブは「長子の特権」――家督と祝福――を得るために兄エソウを出し抜き、これがもとで逃亡生活をします。

罪深い自分の赦しを請い、そのまま荒野で石を枕に眠ってしまったときに夢をみます。それは地から天の頂きに達した梯子が立っていて、神の使いたちがそれを上り下りしているというものでした。

ちなみにこのシーンは映画作品「炎のメモリアル(Ladder 49)」のモチーフになっているそうです「Ladder 49」とは「第49号梯子車」という意味でしょうが、そこには聖書のキーワードも含まれています。それがヤコブの梯子(Ladder)であり、49は創世記の49章にヒントがある! ということらしいです。

さて、そんな罪深きヤコブに自分を重ねあわせているのがサマリヤの女です。彼女にはかつて5人の夫がいましが今はいません。愛や心が満たされることがないために癒しを求めて、ヤコブに梯子の救いが差しのべらたのと同じようにいつしか自分にも救いがもたらされるのではないかとう願いが彼女にはあったのかもしれません。

そう考えるとサマリヤの女が、他の井戸よりも遠くにあり、汲むのにより多くの労力が要り、涌き水でもないヤコブの井戸にやってくるのがわかるような気がします。

そんなサマリヤの女にイエスは、わたしが与える水を飲む者は、いつまでも、かわくことがない〜といいます。

空井戸に落ちたブルースは、水がなかったために全身を打ちつけます。さらにそこに巣くっていたコウモリの大群に遭遇して恐怖で気を失います。
やがて父がロープを使って井戸の底に下りてきて助けてくれました。

その後、町に両親と一緒にオペラを観にいったブルース少年は、劇の演出効果でコウモリに襲われたような錯覚で気分がわるくなり、両親と共に劇場を出ます。そこで強盗に両親を殺されてしまいます。

ブルースは両親が殺されたのはコウモリを怖がったからだと自分を責めて苦悩します。罪の許しを求め、また悪とは、正義とはなにかという真理を求めて旅に出ます。
その旅はまるでサマリヤの女が救いを求めて遠い井戸に水を汲みに通いつづけた日々のようです。

なぜ井戸に落ちたか? 

なぜなら、這い上がるため。

なぜ空井戸で水がなかったのか? 

なぜなら、一時的な乾き(癒し)を得ることを繰り返さないため。

レイチェルは言います。
「人は中身じゃなくて、行動で決まるのよ」――と。

キリスト教でいうと、ローマ・カトリックは救いのためには信仰にくわえて「よい行い(業)」が必要だとする立場をとっています。

罪の意識に苦悩しながら救いをもとめて旅した男が、与えれたタラントを活かして、ゴッサムシティの正しい人々のために(その数が限りなく少なく思えても)行動する。

コウモリという名の恐怖=罪の意識を受け入れ、これをもって「行動」することによって永遠の命にいたる水、生ける水、かわくことがない水を得るために行動しつづける男――それがバットマンではないでしょうか。


■ その他

ついにパットマンにも登場! なんかビミョ〜な忍者! 

バットモービルの活躍と操縦席の変形ぶりに脱帽もんです!☆


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Tracked: 2009-07-11 01:00
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